「夏休み」  

 

 

 

「ああもう駄目だぁ〜。」

そう言ってだらりと机に突っ伏した大馬鹿の後頭部を拳で思い切り殴りつけた。
さすが中身の詰まっていない頭だけあるらしく、ごんっといい音が響く。
「あイタぁっ!!」
「まだ30分も経っていないだろうが!!」
「だってそんなこと言ったってよぉ〜、分かんねえもんは分かんねえ。」
「誰がわざわざお前ごときのために時間を割いていると思っているんだ!!」
「そりゃ誰って
、チバちゃん。」
ごんっ!!
俺がこの手の悪ふざけは好きではない人間であることは日鳥には想像付かなかったらしく、

日鳥はさらにもう一発の鉄拳を食らうことになった。

 

 

ことの始まりはこうだった。
日鳥が夏休みの課題の数学分が終わらないと言って泣きついてきた。
立井にでも教わればいいと最初は一蹴し歯牙にもかけなかったが、余りにしつこくすがって

くるのが邪魔で、かえって自分の勉強に支障が出そうになり、特別に教えてやることにした。
この大馬鹿を担当している教師が気の毒に思えたからというのもある。
「いいか、勉強や宿題に関する質問以外は一切の私語は禁止だ。
私語だけではない、無駄に姿勢を崩したり室内見回したり貧乏ゆすり等の集中力を妨げる行為や

全身の血の巡りを悪くするような行為、その他脳の働きの効率を落とすような視線しぐさ呼吸は

禁止だ。少しも考えないで質問することも駄目だがどうあがいても答えに至らないような無駄な

長考も禁止する。その場合は速やかに質問していい。但し要点を簡潔に述べよ。以上だ。」
そう言い放った時、日鳥の顔には、すでにお手上げの色が浮かんでいたが。

 

そして問題の解き方を一から説明してやり、基本は何とか当たるようになったところで応用問題

へと移らせたところで2分で先の弱音だ。面倒を見始めてからは27分しか経っていない。
「なあ、千庭。」
「何だ。勉強に関することではないなら私語は不許可だと言っただろう。」
「んな堅いこと言うなよぉ。可愛い教え子の頼みじゃんかぁ。」
「可愛くもないし教え子とも思っていない。」
「チェツ
もしこれ当てたらぁ、キスしてくれる?」
「はぁっ!?」
救いようのない大馬鹿の考えることは計り知れない。
「いいじゃん、そんぐらいのご褒美。もししてくれるってんなら俺頑張るもんね。
そしたら能率あがるよ。その変わりもし解けなかったり外れたりしたら、俺のこと一発殴るなり

蹴るなり好きにしていい。」
面白い。ならその賭け乗ってやろうじゃないか。

 

「どう?」
「外れだ。」
「そんな!ありえねえよ!公式も解き方も絶ッッッ対に合ってるはずだ!!」
椅子から身を乗り出して抗議してくる大馬鹿の額をぱんとはたいてやる。
「痛ってえっ!!」
「この大馬鹿が。問題を良く見ろ。」
「公式に当てはめる分かっている数値は直径じゃなくて半径だ。2倍して代入しないといけねぇんだよ。」
あ。」
日鳥の顔が青ざめる。
肉食獣に食われる寸前の草食動物のようだ。
いい表情だと思った。


「一発だな?よぉく歯ぁ食いしばっておけよ。」
そう履き捨て左手で日鳥の胸倉をがしりと掴む。
「ちょっ、チバちゃん、目がマジなんスけど
…… 。冗談だよ、ね?」
「俺が冗談を好む類の人間に見えるか?」
「うわっ
…… !」日鳥が目をつぶる。
ガツン

少ししくじった。勢いが良すぎて俺の歯が日鳥の歯に当たってしまった。
その音が鈍く耳元に響く。
「ん
ふっ …… !!」
日鳥が間抜けな喘ぎ声を出した。
しばらく力強く抑え続けたが、酸欠になってきたようなのでこれ以上脳に負担を強いて今よりも馬鹿にして

やることもないだろうと思って塞いだ唇を開放してやる。
「チ、チバちゃん?」自分から言いだした賭けの割りに、驚いていた。この大馬鹿は不意打ちに弱いらしい。
面白い。調教のしがいがありそうだ。
「一発好きなようにしていいんだろう?」
自由な右手を胸元に滑り込ませ、引き締まった筋肉の感触を感じる。
「俺へ作った貸しは高くつくぞ?」
そう言って右手をズボンの中にすべり込ませた。

 

 

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〜羅夢様より頂きました〜

 

いつもサイトに来て下さっている羅夢様より、素敵SSを寄せて頂きました♪

しかも チバヒト 、でもあの問題、 解けてたらヒトチバ じゃんよ!!

とか思うともう楽しくて余計に血圧が上がりました(笑)!

一粒で二度美味しい妄想をさせて頂きました〜(笑)!!有難うございます!!

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