微パラレルなのですが、金太個人的には「タイヨウのウタ」の次にお読み下さるとより一層楽しいかと(笑)。

「メリークリスマス」

 

 

 

時計の針が12時を回った頃、ふいに玄関のチャイムが鳴った。
勉強が乗ってきたところだったので、こんな遅くにどこの礼儀知らずだと腹を立てつつ玄関を開けた。
三樹だ。

「はーい、千庭君、元気にしてるぅー?」
顔が赤く、吐く息が酒臭い。足元がふらついておぼつかなかった。
「今日は職場の忘年会でねー。近く通りかかったからさ、急に顔見たくなっちゃって来ちゃったんだー。」
「とても分別のある大人のすることとは思えませんね。恥ずかしくないんですか?見境つかなくなるまで

酔いつぶれるなんて。」
甘やかすつもりなんて毛頭ないので冷たく言い放った。
この優男はこれくらいきつく言わないと分からない。
「今日は千庭君一人?ご両親はどうしたんだい?」
「法事で泊りがけで出かけています。」
「へ?君は行かなかったの?まぁだからこうやって逢えたんだけどねー。逢えて嬉しいよ。」
「これでも来年は受験生ですからね。まさか先生に勉強の邪魔されるとは思いもしませんでしたが。」
「そっかあ、そりゃ、悪いことしちゃったなぁ!あはは〜。」
そう言って三樹が頭をかきながらへらへらと笑う。
次の瞬間、三樹がバランスを崩して向かいあった俺の上に覆い被さって来た。
三樹を支えるべきか避けるべきか一瞬迷い受身を取るのが遅れた。
結果三樹の下になる形で背中を強打した。
手のかかる男め。
とりあえず肩を貸して自室へ運ぶ。

こんな酔っ払い床に転がしておいたって構わないと思ったが、どうせ今夜は徹夜の予定でベッドを使う

つもりはなかったため、慈悲深くベッドに寝かせてやることにした。
「ごめんねえ。千庭君にはいつも迷惑かけちゃうなあ…。」
「別に先生のためじゃありません。このまま追い返して駅のホームで凍死でもされたら面倒ですからね。」

酔っ払い相手の応急処置ぐらいしてやろう。
とりあえず三樹の衣服を緩めてやることにした。
首筋に手を伸ばしてボタンを一つずつ外す。
白い肌と意外にたくましい胸板が覗いた。

忍びらしく一応鍛えてはいるんだな。

そう思いながら、第4ボタンまで外したその時だった。
三樹の右手がシャツを脱がせていた俺の左手を掴む。
「先生?」
覗き込んだその表情はまだ赤いながらも、先ほどまでの酔っ払いのへらへらした顔とは別物だった。
「好きだ。」
「酔った勢いですか?仮にも教職者の言うこととは思えません。情けない。」
「情けない、か。」
三樹がどこか寂しそうな顔を浮かべた。言われたくない一言だったらしい。
ほんの少しだけ後悔した。
「そうだな。ボクは情けないよ。だから、酔った勢いでも借りないとこういうことは言えないんだ。

君のような真っ直ぐな目をした強い人に惹かれるのも、僕にはない魅力を持っているからだろう。」
いつになく真面目な物言いだった。
「君が欲しい。」
真っ直ぐな目…か。俺に言わせれば、こうも素直にストレートに愛情表現できる三樹の方がよっぽど

真っ直ぐな目をしている気がした。
「いいでしょう。もしもバレたら責任は全部先生一人に背負っていただきますからね。」皮肉のつもりだった。
「いいよ。」
三樹が微笑む。
「君を手に入れるにはそれくらいのリスクを背負うことも当然だろう。でないと神がお許しにならないよ。」
そこまで想われているとは思いもしなかった。
「君の分の罪も全部僕が背負ってあげるから。」
ささくれ立った心が優しく満たされていくのを感じる。

「言うの遅くなっちゃたけど、メリークリスマス。」

そういえば今日はクリスマスだった。

プレゼントに自分の全てを三樹にくれてやってもいいかもしれない。
そう思ったら、受験勉強も休み明けの模擬試験も、もう何もかもがどうでも良かった。
「先生…。」そう呟いて交わした口づけは当然のことながら酒臭かった。
激しく絡み合ってる間も自分の体に匂いが移りはしていないか正直何度か気になったくらいだ。

それすら許せるくらい何もかもが愛しかった。

 

 

 

 

 

部屋の天窓から朝陽がふりそそぐ。
背中越しに三樹の寝息が聞こえる。
着衣は全部脱ぎ捨てていたせいか、汗ばんだ肌の感触もぬくもりも、心臓の鼓動もすべてが鮮明に

伝わってきた。
俺の体に乗っかる三樹の左手が重く寝苦しく、邪魔で払いのけた。
「…千庭君?」
それで目が覚めたらしく、三樹が目を擦りながら顔を上げた。
「朝、強いんだねえ。低血圧かと思っていた。君は血刃術の使い手だし。」
洒落たつもりか。
ベッドの上を見回して昨晩脱ぎ捨てたシャツを見つけそれを羽織る。
「コーヒーでも淹れて来ますよ。二日酔いが吹っ飛ぶような強力なやつをね。」
ボタンを締めながらベッドから抜け出した。
「早く目を覚ましてもらったら、証拠隠滅に働いてもらいます。とりあえずシーツの洗濯は済ませてもらい

ますから、早く脱いだ服着てください。」
「人使い、荒いなぁ……。」
「俺に作った貸しは高くつくんですよ。」
三樹の言葉も昨晩の行為も嬉しかったことは、まだ伝えないでおこう。
昨日の迷惑料にそれぐらいの意地悪は許されるはず。
そう想って部屋を下りた。

 

 

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羅夢様から頂きました微パラレルのミキチバSSの第二弾であります♪

羅夢様の書かれる三樹ティは自分のイメージにとても近く、大人で飄々としていて
抜け目もなく、そして千庭が好き、と三拍子揃っていて読むのがとても楽し
いです(笑)。

家庭教師三樹ティ…実は好きです(笑)。
パラレルならではの二人の2ショットが嬉しい♪

 

羅夢様有難うございました♪

 

2007-01-11

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