通り雨」

 

 

 

いつものように縫と二人で手を繋いで渋谷を適当にぶらぶらしていたら、不意に夕立に襲われた。

付き合いだしてから初めて遭遇した夕立だった。通りは人でごった返していて走ることもままならなかった。

とりあえず学ランを脱いで縫の頭に急いで被せた。

 

「きゃっ。」

縫が一瞬驚いたような声を上げた。

「何っ!?」

「いいからこれ被ってろ!濡れちまうだろ?」

 

そしてそのまま駅へと急いだ。

 

駅の改札口の床はすでにびしょ濡れだった。

ここまで来たら大丈夫だろ。縫が俺が頭から引っ掛けた学ランを外した。

 

 

「ふう……。大丈夫だったか?」

声を掛けると途端に縫がしかめっ面を作った。
「…何だよ。」

ちょっとむっときて言い返す。
「日鳥君ったら。私、折り畳み傘、持ってたのに。そそっかしいんだから。」
「…え、そうだったのか?」
「どうせなら、相合傘したかったな。」

縫がぽつりと呟いた。「でも……。」
「日鳥君、ずぶぬれになっちゃったね。寒くない?」
言われて気付いた。
「あ、本当だ。……っきしょいっ!」
気付いた途端に寒気が襲ってきて思わずくしゃみが出た。
「もう、いつもそう。他人の世話焼いてばっかり。」
縫がハンカチで俺の顔を拭きながら言った。
「このままじゃ、風邪引いちゃうね。……私の家、来る?」

 

 

................................

 

縫の家に着くと、縫は手際よく熱い紅茶とクッキー、そしてふかふかのバスタオルを出してきた。
バスタオルで頭をわしゃわしゃ拭いている間、心臓がばくばく言っていた。
女の子、それも好きな子の家に上がるのなんて初めてだったから。
さっき家に上がる時、縫は自分で鍵を開けて俺を招き入れた。

「縫、あのさ、今日おふくろさんとかは……?」
「今日はパパもママも居ないもん。法事で親戚の家に泊まりで出掛けてるから。」
「あ、そうなの?」

平然を装って返事をした。
っていうことは、今日はずっと俺達二人っきり……?

「ちょっと待っててね。準備して来るから。」
そう言って縫は一旦リビングを出て行った。
パタパタと廊下を歩き、トントンと階段を上がる音がする。
しばらくして縫がリビングに戻ってきた。
「日鳥君。」
縫は私服に着替えてきていた。準備ってこれのことか。
戻ってきた縫は俺の隣にちょこんと座り、こう口を開いた。

「服、脱いで。」
「へ?」

一瞬、縫が何を言っているのかが理解出来なかった。

「そのままじゃ風邪引いちゃうわ。私が暖めてあげるから。」
「え?ちょっ、お前…。」
「もう、男らしくない!早く脱いで!」

縫の手が乱暴に俺のシャツのボタンを外していく。
そりゃ俺だって男なんだから、こういうこと、まったく想像しなかったわけじゃない。
縫の裸だって何度も夢に見たし、ずっと触れてみたいと思っていた。
初めての相手が縫だったらどんなにいいだろう、って考えだってずっと持ってた。
でももしそんな時が来たら、その時は俺の方からリードしたいと思ってた。
そうこうしている間に俺は学ランも柄シャツも脱がされていた。
縫の手は早くも俺のベルトに掛かり、ガチャガチャと音をたて外そうとする。

「ぬ、縫!」
「なあに?」

縫が顔を上げて首をかしげた。
「ややや、やっぱまずいよ。こういうのはさ、ほら手順を踏んでから、もっといいムードでした方が…。」
途端に縫の顔が曇った。
「私じゃ、嫌?信用出来ない?」
「や、そういうわけじゃないんだ!全っ然!むしろ縫ならこっちからお願いしたいくらいで、
その、俺なんか

 には勿体ないというか……。」
「じゃあ私にまかせて!」

俺の抵抗(?)むなしく、ズボンはすっかり脱がされた。
もういい、こうなったらなるようになれだ。
俺は目をつぶって覚悟を決めた。

 

「はい、じゃあ次はこれに着替えて。」

…ん?

目を開けると縫が男物の上下のスエットを差し出していた。

「パパので悪いけど、濡れたままとか裸で居るよりましでしょ?」

…へ?

「洗濯終ったら乾燥機掛けるから、長くても一時間は掛からないわ。すぐ済むから楽にして待っててね。」

そう言って縫は俺の学ラン上下と柄シャツを抱え込むと奥へ引っ込んだ。
しばらくして洗濯機に水をそそぐ音が聞こえる。

 

……そーゆー、こと、ね。」
窓の外はすっかり雨が上がって綺麗な虹が出ていた。

 

 

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羅夢様より頂きましたヒトヌイSSです〜。
小部屋で『SKYER』ネタで裸エプロンネタの後、ヒトヌイで同じく早とちりネタという事で頂戴致しました♪
どこまでも微笑ましい二人です♪

羅夢サマ、有難うございました♪

2007-03-24

 

 

 

 

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