微パラレルのシリーズですので、金太個人的には「タイヨウのウタ」→「メリークリスマス」の次にお読み下さると、より一層楽しいかと思います(笑)。

 

 

『バレンタインデー・キッス』

 

 

 

「千庭君、はい。」

 

そういって三樹がやたらごちゃごちゃした悪趣味な包装の小箱を差し出してきた。

 

「何ですか、これ?」

「やだなあ、今日何の日か忘れちゃったの?バレンタインだよー。」

三樹が笑う。

「そういえばそうですね。男子校なんで興味も縁もゆかりもありませんが。」

「つれないなあー。せっかくリボンも包装紙も吟味に吟味を重ねて凝ったラッピングしたのに。チョコだってねー、

 材料厳選して作ったんだから。そこらの店のより美味しいはずだよ。ほら、見て。」

 

自分で自慢の包装と言っておきながら三樹はびりびりと包装紙を破いて包まれていた箱を開け、俺の鼻先に突き出した。

 

「ねー?綺麗でしょ?千庭君のために、頑張ったんだよー。」

 

生チョコが行儀良く並んでいた。

 

「食べれるんですか、それ。」

「うわ、苦い発言言うんだねー。」

「俺、チョコはあまり好きじゃありませんから。」

「えー勿体無いよ、脳にはいいんだよ。じゃあいいよ無理やりにでも口の中に押し込んでやるから。」

「は?」

 

怪訝な顔を作って三樹を睨みつけると何故か三樹は生チョコを自分の口にパクリと放り込んだ。

 

「何をしてるんですか?」

言い終わらないうちに三樹が俺の後頭部を掴み、唇を押し付けてきた。

三樹の舌先が俺の唇をこじ開け口腔内に割って入り込み、三樹の唾液で若干溶けた生チョコを俺の喉の奥へと押し込んだ。

唇が強く塞がれているので吐き出してやることも出来ない。そうこうしているうちに生チョコは原形をとどめないほど溶け、俺の喉

の中に消えていった。

 

「ね?結構イケるでしょ?」

三樹がニタッと笑う。

その顔を見て思った。間抜け奴ッ。

質問には答えず、卓上の鏡をその間抜け面の前に突き出してやる。

「チョコの評価よりご自分の顔の様子をまずは気にしたらどうですか?」

「ありゃ?」

三樹の口の周りは俺の唾液と生チョコ、それにまぶしたココアでべとべとだった。

「はは、かっこ悪いところ見られちゃったなー。悪いけどティッシュ2,3枚もらえる?」

 

ティッシュボックスは机の上ではなく、たしかベッド脇のサイドテーブルに置いていた。こんな男のために取りに行く数メートルが

面倒くさい。

 

仕方ない。

 

椅子から立ち上がると三樹の胸倉を掴んで、口の周りの汚れを丁寧に舐め取ってやる。

一方的に押し付けられたとはいえチョコを貰ったのは事実だ。

それに見合う“お返し”ぐらいはくれてやってもいい。

礼節を欠いた人間だと思われるのも癪だしな。

間抜け面を綺麗にしてやると、三樹がへらへらと笑い出した。

 

「えへへ、ありがとう。チョコって媚薬の効果あるのかな?」

「それじゃあきっと、ないんでしょうね。そんな気持ちでしてあげたわけじゃありませんから。」

「千庭君可愛いなー。」

 

三樹が後ろから抱き付いて甘えてきた。あの跳ねた毛先がうなじにあたってちくちくと痛い。うっとうしい男め。

 

「ホワイト・デーのお返しはちゃんと体で3倍返しして払ってもらうからねー。忘れないでよー。」

「ふん。図々しい。何甘ったれたこと言っているんですか。なら3倍分家庭教師として働いてもらいますよ。」

 

苦々しく言い返す。やはりチョコレートは苦手だ。

 

 

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羅夢様から頂きました微パラレルのミキチバSSシリーズであります♪
バレンタインちょい過ぎの頃に頂戴していたのですが、その頃腐女子ページをファイル整理の為に

一時閉鎖していて、ホワイトデーにも逃してしまいました…。羅夢様、すみません…。

しかし、ホワイトデーが気になるところですね!!!!(大興奮!!!!)

羅夢様いつも有難うございます◎

 

2007-03-24

 

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