羅夢様からの頂き物SSです♪♪♪ミキチバ家庭教師パラレル SSです)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『勝利のキス』

 

 

 

「ねえ千庭くん。」

俺の隣で、机に顎を乗せ、退屈そうにしていた三樹が、年甲斐もなく気色の悪い上目遣いで話掛けてきた。

「何ですか?」
「ねえ、せっかくの夏休みなのに、毎日毎日勉強勉強たまに忍務ばっかりで退屈じゃない?」
「そんなことありませんね。知識の吸収も、数学の問題を解くのも、ゲームのようで楽しいですから。」
きっぱりそう言い返すと、三樹は露骨に不満そうな顔を浮べた。
「たまにはさぁ、息抜きにどっか出掛けようよ。室内にばっかりこもってたら、体によくないよ。たまにはお日様の光浴びないと。」

三樹がお日様などという言い回しを使ったせいで、脳裏にふとどこぞの太陽好きな大馬鹿の顔が浮かんだ。休みの時にまであのへらへらした顔、思い出させやがって。

「行きません。紫外線は体に良くありませんし。」そう言い放った。
「じゃあさ、息抜きじゃなくって、社会勉強ってことで。みなとみらいなんかどう?ここからなら近いだろう?」

相変わらず口の減らない男だ。
「行きません。模擬試験も近いですし。」
「えぇ、でも君、学年トップなんだろ?そんなに根つめてまで、勉強する必要、あるの?」

まったくこの男は。

「俺の学校がどんな学校か知らないんですか?教師失格ですね。俺が通ってるのは、有数の進学校のあくまで横浜キャンパスです。他に品川と川崎と池袋にもキャンパスがあって、4校合同で順位を付ける学力テストが年に2回あるんですよ。」
「へえ。大変だねえ。」
三樹が驚いたような感心したような間抜けな声を上げる。
「川崎キャンパスに、俺のことをやたらと敵対視しているヤツがいるんですよ。中学受験の時、塾が一緒だった奴なんですけどね。たまに交流行事なんかで見かけると、必ず絡んでくるんです。相手にはしてませんが、順位と偏差値でそいつより下になるのはいい気分とは言えませんからね。」
「ふーん、そうなんだあ。君みたいな綺麗で頭のいい子に意地悪するなんて、よっぽど暇なヤツなんだねー。」

すぐちょっかい出してくるのも迷惑さでは一緒ですよ、そういいかけたが黙っておくことにした。

 

 

 

 

夏休み中の登校日。
この日が試験の日でもある。朝自宅を出ると三樹がひょいと姿を表した。

「どうしたんです?こんな朝早く。朝帰りか何かですか。感心しませんね。」
「すぐそういう憎まれ口聞くんだからー。まあそんなところが可愛いけど。」
「で、どんな用件です?」
「最後のダメ押し、してあげようと思って。」
「余計な心配なら結構ですよ。」
「嫌だなぁ、君の学力や頭脳には微塵の心配もしてないよ。大丈夫だってきっと信じてる。でも、それ以外にしておくことはあるだろう?ゲンかつぎって言えばいいのかな?運頼みってヤツ。」
「そういう非科学的なことは信じてないんですけどね。合格祈願をする暇があったら公式や英単語の一つでも覚えた方がよほどマシです。」
「いいからいいから。僕の運、分けてあげるよ。」
「は?」

何を馬鹿なことを、そう言い返そうと思ったが、向こうが“次の行動”に移る方が早かった。
三樹の唇が俺の唇を奪う。
夏の暑さのせいだろうか。
まったく、この男は何を考えてるんだ。

「こんなことで運が移るとでも本気で思ってるんですか。もしそうなら教師より占い師にでもなることお勧めしますよ。」
「そうかな?だったらその時は、僕と君の相性と、僕らの未来をまず占うよ。今日の試験、頑張ってね。」
朝の光に、三樹の笑顔が妙にまぶしかった。

 

 

 

「ねぇねぇ、試験の結果、どうだった?君を苛める嫌な子には、勝った?」
別に苛められているわけではないのだが。
「…勝ちましたよ。」
「そっかあ、じゃあ僕のキスも効果あったんだねえ。」
三樹が満足そうに微笑む。
「さあ、どうだか。」
「そっけないなあ。じゃあ、僕の運、同じやり方で、返してよー。」
「ふん、そのまま当分不運なままで居たらどうですか?少しは頭冷やしてください。」
「ま、いいけどね。僕は千庭くんのこと信じてたし。兆が一、仮に千庭くんが苛めっ子より点数も順位も低かったところで、千庭くんが千庭くんであることにも僕の気持ちにも変わりはないし。」

今以上に調子に乗られると困る。
点数よりも順位よりも、心配してくれたことの方がやや嬉しかったことは、当分黙っておこう、そう思った。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

羅夢様より頂きましたミキチバ家庭教師パラレル SSの続きです。

その同級生は、命拾いしました…ね…!!
いつも素敵な作品を寄せて下さって下さってありがとうございます♪

 2007-09-17

■戻る■