「ドラクエ8」にしきおり金太さまへ
キンダーガーデンクエスト(幼稚園児クク・高校生チェロ)

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夕暮れ小道、ふたり道

本日幼稚園のお迎えに来てくれたのは兄

不承不承迎えに来たと云っている横顔を見上げながら、ククールはそっと兄の手に

手を伸ばすが、それはあからさまに払われて、失敗

まあいつものことさと諦めて、ククールは兄の前を駆けた

「なあ公園で遊んで行こうぜ」

ほらほらと横手を指差せば、そこには小さな公園

人影はない

マルチェロは「ダメだ」と云った

拗ねた振りをするククール

「なんで」

「夕飯の買い物にも行くからだ」

「そんなに時間掛かんねえよ。ちょっとだけ。な?」

云ってククールは、マルチェロの制止も聞かずに公園へと足を踏み入れた

一瞬捨てて行こうかと考えたマルチェロだったが、小さな子供を一人誰もいない公園に

置いていくのは保護者としての責任を全うしていないと、仕方なくククールの後を追う

ククールはブランコを漕いでいた

マルチェロはブランコの前にある鉄パイプで出来た低い柵に腰掛ける

「ブランコなど幼稚園で遊び尽くしているだろう」

「まあね。でもさー」

ククールを乗せたブランコが夕焼け空に舞い上がる

「でも、なんだ」

西日に伸びるふたりの影

「兄貴とは全然遊んでない」

ブランコが揺れるたびに近付いたり、遠のいたり

マルチェロは云った

「…押してやらんぞ」

「ケチ」

「自分で漕げ」

「アンタってそういう人だよね。知ってるけど」

ククールは笑った

笑って大きくブランコを漕ぐ

「なあなあ兄貴」

「なんだ」

「飛び降りるから、見てて」

その言葉にマルチェロは思わず立ち上がった

どうして子供は平気で危険なことをするのだ、と内心で舌打ちをしたつもりだったが、

「危険なことをするな、頭を打ちでもしたら更にパアになるだろう!誰が世話をすると思っているのだ」

思わず本音が口に出た

だがククールは明らかに飛び降りるタイミングを見計らっていた

「大丈夫・大丈夫」

その根拠は何だと云ってやりたかった

だが云ってやる前に、身体が動いていた

ククールの両足がブランコから離れる

次の瞬間

マルチェロの腕の中にはククールが降ってきた

そのままククールの勢いを殺せず、マルチェロは格好悪くも尻餅をつく

ククールは右腕の中

背後には鉄パイプ柵があった

「……」

「……」

しばし心臓と呼吸整え期

そうしてまず口を開いたのはマルチェロだった

「鉄パイプに頭をぶつけたらどうするつもりだったんだ」

ククールは兄の腕の中、俯く

「…もっと飛べる自信あったし」

「飛べたとしても、足先を柵に引っ掛ける可能性もあるだろう」

「…でも」

俯いたままのククールの視線はマルチェロの左腕を探して彷徨った

兄の左手はふたりの体重の勢いで柵に頭をぶつけてしまわないように、ブレーキの役目を

砂利の上で果たしていた

たぶん掌はふたり分の体重で擦り切れている

「…ごめん」

ククールは云った

マルチェロが舌打ちをする

「次は助けてやらんぞ」

マルチェロはククールを降ろして立ち上がり、服についた砂を叩いた

そして有無を言わさずの目で弟を見下ろす

「さあ、帰るぞ、ククール。もう充分だろう」

「…うん。…あの」

「なんだ」

歩き出すマルチェロ

追うククール

「手、怪我したんじゃねえの?」

「ああ。少し擦り切れただけだ」

やがてククールは兄の横に並んだ

その手を取ったのはマルチェロの左手

ククールは弾かれたように顔を上げた

「怪我した手で、痛くない?」

マルチェロは前を見据えて歩く

「お前にうろうろされるよりは良い」

「あっそ」

なんて云いながらもククールは微笑んだ

明日はジャングルジムのてっぺんから飛び降りてみようと考えながら

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〜「遺伝子メランコリ119」 式部 隆 様より〜

「毎日妄想」ページの10万hit記念に頂いてしまいましたー!!有難うございます!!
こちらの数ある兄弟の作品の中でも、金太が大好きな高校生チェロと幼稚園児ククのパラレル
『キンダーガーデンクエスト』のシリーズです!大好きで、更に怪我ネタで!とかリクエスト
をさせて頂いて、頂戴いたしました!!うっわぁ、もうドウシヨウ!!
勝手に背景を付けさせて頂きましたが(…これで精一杯で…もうホントすみませ…ん…泣!)、
何気にククの手提げは「あの」スライムナイト付き手提げなのです…♪

このシリーズ、特に兄貴好きな方には堪らんと思います!!!!!!
内容はかなり面白いのですが、心もほんわか温かくなります…♪

そんな式部様のサイトは下のバナーをクリック。
「キンダー〜」シリーズはメニューの「DQ8」→「パラレル世界の〜」の中にいくつかあるのです♪