「ドラクエ8」キンダーガーデンクエスト(高校生チェロ・幼稚園児クク設定)

 金太さまへ

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夜十時、マイエラ孤児院のちびっ子たちが幸せな夢を見る時間

ククールはベッドにもぐりこみながらも、隣に寝転びククールを寝かしつけようとしている兄に
せっせと話しかけていた

「なあなあ、あのさ、兄貴」

「…子守唄を歌ってやったら寝る約束ではなかったのか」

「やだなあ、兄貴が耳元で囁いてくれてるってのに寝れるはずがないだろう!」

「……」

マルチェロは溜息

そんなマルチェロにククールは体を摺り寄せる

「なあ兄貴」

マルチェロは微妙に体を離す

「なんだ」

ククールはもう一度接近を試みながら、可愛く首を傾げてみた

「兄貴は魚好き?」

「焼くよりは煮付けが好きだな」

「…ええと、じゃあイルカは?」

「食べた経験はないからなんとも云えぬ」

「……。…えーと、そう、ペンギンとか!好き?」

「脂ばかりで体に悪そうだな」

「…………。…いやそうじゃなくて」

ククールはベッドから起き上がり、幼稚園の黄色のバッグを手に取った

マルチェロは上体を起こし、少しだけ怒鳴る

「おい!何処へ行く。いい加減に寝ろ!」

「まあまあ、どうせ明日睡眠不足で苦しむのは俺なわけだし。幼稚園で昼寝して来るって」

と云いながらククールは鞄から出したプリントをマルチェロに渡した

「明日の朝、お前を起こすので苦労をするのは私なのだが」

マルチェロはプリントを受け取り、目を通す

『親子遠足!水族館オリエンテーリングご案内(主催:トロデーン幼稚園子ども会)』

「…好きとはこういう意だったのか」

「うん」

「で、これがどうした?まさかとは思うが」

「行こうよ、兄貴」

ククールはよじよじとベッドによじ登る

マルチェロはそんな弟の体をひょいと片腕で引き上げて、却下した

「幼稚園の行事なら仕方がないが、自由参加のものにまで行ってやる義理はない」

布団に押し込まれ、ククールはもぞもぞ

「義理って。つーか兄弟なのに」

マルチェロはぽんぽんとククールの体をあやすように軽く叩く

「いいからもう寝ろ」

「寝たら遠足に行ってくれる?」

「すぐに取引を持ち出すな」

「兄貴に似たんだよ」

ククールはふぁぁと大きなあくびひとつ

目もうとうとと瞼が落ちかけている

「子ども会の行事だから参加したいわけじゃねえんだ」

「?」

「兄貴と一緒に遠出したかったんだよ」

それからククールはゆっくりと眠りの中へと引き込まれていった

マルチェロはやれやれと起き上がる

すぐにまるで起きているかのようにククールがマルチェロを求めたが、マルチェロは
そのへんにあったプリズニャンのぬいぐるみをその腕に抱かせる

眠っている姿だけは可愛い、柄にもなくそんなことを思った

プリズニャンのおかげだなとプリズニャンのぬいぐるみを撫でておいた

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「じゃ、まずはイルカショーでも見に行くか」

リュックを背負ったククールはマルチェロの手を引っ張った

辺りにはトロデーン幼稚園子ども会のメンバーである親子の姿が多く見られる

マルチェロはククールの手を引っ張り返した

「ククール、お前はこの遠足の要旨を聴いていなかったのか?オリエンテーリングなのだぞ。
イルカショーの時間も決められている」

「え〜めんどい。どうせ魚の体長とか食べるものとか、住んでいるところを水槽巡って、
看板見て答えていくだけだろう。そんなの適当に答え書いとけばいいさ」

「そうか、そういうつもりなのならば私は帰る。折角の日曜日だというのにお前の勝手な
行動に付き合ってなどおれん」

マルチェロはこれ幸いとばかりにさっさとククールの手を離した

慌てたのはククール、既に背中を向けてしまった兄の手に縋る

「分かった!分かったって。仕方ねえなあ、オリエンテーリングちゃんとするから、帰んなよ」

「仕方ないのはどっちだ…まったく…」

そういうわけで親子(もしくは兄弟)対抗・水族館オリエンテーリングが開始された

が、

「…見えない」

ククールは背後のマルチェロを振り仰いだ

日曜日の水族館は人・人・人

人気の水槽の前には人・人・人・人

小さなククールは踏み潰されてしまいそうだった

「順番を待っていればその内見れる」

マルチェロは云ったが、ククールはマルチェロに向けて両腕を上げる

「なあ」

そんな訴えにマルチェロは溜息

しゃがんでククールを抱き上げる

「見えたか?」

「見えた見えた。魚、うまそー」

マルチェロは情操教育方法を間違えたと真剣に思った

「なああっちあっち、あっちの水槽も見に行こうぜ」

ククールが次の水槽を指差す

マルチェロはククールを一度降ろそうかとも考えたが、どうせ次の水槽でも
抱っこをせがんでくるに違いないと思い、そのまま移動

次の水槽にはジンベエザメがいた

オリエンテーリングの問題にもなっている、『ジンベエザメの腹の下にいるサメはなんというサメでしょう?』

「コバンザメでいいんだよな?」

ククールは早速解答用紙を埋めながら、マルチェロに確かめた

マルチェロは頷く

そうして更に次の水槽へ移動しようとして、しかしククールが待ったを掛けた

「もうちょっとサメ見たい」

「かまわんが…サメが好きなのか?」

「うん。ジンベエザメとコバンザメが好きなんだ」

「そうか」

ククールがじっとサメを見つめているので、マルチェロはそれ以上問うのをやめた

知的好奇心があることは良いことだ

ククールが「そろそろ行こうか」と言い出すまで、マルチェロはジンベエザメと
コバンザメの水槽の前でククールを抱っこし続けた

******

夜十時、マイエラ孤児院のちびっ子たちが幸せな夢を見る時間

さすがに遠足で疲れたのか、ククールも既に夢の中

いつものようにマルチェロに縋ろうとする手には、今日のオリエンテーリング優勝賞品である
ジンベエザメとコバンザメのぬいぐるみ

だがふとマルチェロはそのぬいぐるみに黒い文字を発見した

ジンベエザメには『まるちぇろ』

コバンザメには『くくーる』

子供らしい可愛らしさをアピールするために書いたのだろうとマルチェロは思った

ついでに知的好奇心があるわけでもなかったのかと脱力

それでも弟が「ジンベエザメとコバンザメが好き」と云った理由は分かるから、
マルチェロは今度こそククールの頭を撫でてやった

その手の下でククールはにんまりと微笑む

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〜「遺伝子メランコリ119」 式部 隆 様より〜

「毎日妄想」ページ宛てにリクエストさせて頂いた大好きなキンダーガーデンのシリーズです!!
もう本当に有難うございます!!
金太が大好きな高校生チェロと幼稚園児ククのパラレル『キンダーガーデンクエスト』、
今回は親子遠足ネタでリクエスト
させて頂きました!!
兄貴のククに対する何気無い動作に堪らんかったですよ…!!
引き上げたり抱き上げたり引き上げたり抱き上げたり…(←エンドレス)!!
 

前回同様またしても勝手に背景を付けさせて頂きましたが(…もうホントすみませ…!)
ジンベエザメ、もう、もう、ホントゴメンナサイ…(号泣)!!

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